住まいの原点
竪穴住居は木をもたせ掛け合い作られた。
傾斜した面に包まれた空間は、住まいの原点とも言える。
高層建築、他構造とのハイブリッド化、都市空間全体への活用など、様々な側面から木造・木質建築化を目指します。
「CLTアイディアコンテスト2017」で、当社設計本部現代木造ワーキンググループが、設計部門(テーマ:中層マンション)で「特別賞CLT協会賞」を受賞しました。
新しい木の建築材料として開発されたヨーロッパ発のCLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)は、日本でも、これまで木材があまり使われてこなかった非住宅や中・大規模建築物などに用いられることにより、林業及び木材産業の成長産業化による地方の持続的な産業育成と雇用確保を通して、地方創生の実現に寄与するものとして、関心が高まっています。
また、木材が持つ断熱性・調湿性による建築物の省エネ・省CO2化など、人や環境に優しい都市づくりの面でも効果が期待されている材料です。建築基準法に基づく告示の整備も進められ、2016年からは一般的な建築材料としての活用が始まっています。
竪穴住居は木をもたせ掛け合い作られた。
傾斜した面に包まれた空間は、住まいの原点とも言える。
大判CLTパネルをもたせ掛けて空間をつくる。木の温もりや香りに包まれ、傾斜した木肌の壁に触りたくなる。時と共に色が濃くなり風合いが増す姿に愛着がわく。
楽しそうに壁を登る子供たち。そんな森の中にいるようなワクワクする楽しさがそこにはある。木の持つ魅力と楽しさにあふれたCLTの森は、木に包まれた新たな住まいの原点となる。
今回の提案では「CLT+鋼材ハイブリッド耐火構造」を採用。
芯材に鋼材、外皮に耐火被覆としてのCLTを施すことで、耐火性能と構造合理性を持ちながらCLTを現しとして扱うことを可能にしている。
線ではなく面としての大判CLTを立体トラス状に組むことで合理的な構造体を形成し、従来の構造では得られない開放性と自由度を生み出す。
<大成建設株式会社一級建築士事務所> 関山泰忠、松尾浩樹、清水悟、土谷睦、牟田万里奈、出口亮、島村高平、梅森浩、坂口裕美、川崎賢哉、買手正浩、野島僚子、山﨑信宏、田澤孝祐、丹下幸太
大成建設は「人がいきいきとする環境を創造する」ことを目指し、産業革命期のテクノロジーでは不可能だった、自然と共生する持続可能な都市像を、今ここにある環境で描きたいと考えています。
60年代に官主導でつくられた街「西新宿」超高層ビル街区は、ゆとりをもってつくられた大きな街区や道路、堅牢につくられた建築物は一見メガスケールですが、様々な価値を生み出す高いポテンシャルを秘めていると考えられます。
これからの持続可能な社会に循環する材料として「木」に着目します。それは、人間が本能的に求める自然や緑に寄り添う環境づくりです。今ある都市をゼロから再構築するのではなく、既にあるストックを見つめ直し、環境を改善するように少しずつ手を入れていく「接木都市 | Grafting City」を提案します。
高層ビル街区「西新宿」だからこそ可能な木材のカスケード利用がエネルギー消費を最小限に抑え、多様な生産活動のきっかけとなり、森林の保全・再生へとつながり、拡がっていく。
建築も用途も人もハイブリッドであることにより、多様なつながりが生まれ、より創造的で活力ある都市に更新される。
五感を刺激する多様に自然とつながる環境づくり「バイオフィリックデザイン」を目指す。
大成建設株式会社設計本部+技術センター 、銘建工業株式会社 、工学院大学建築学部まちづくり学科 中島裕輔教授
CLTの普及やCLTを利用した工法等の新たな技術開発を推進し、更なる木造・木質化を目指すため、実現性のあるCLT建築物の提案です。
用途はホテルで、地方創生をはじめ防災機能や環境性能の向上のほか、新型コロナウイルスを想定した新たな生活様式など、時代の要請に応える「地域を活性化させるCLTホテル」です。
計画敷地は、岡山県真庭市(蒜山高原)を想定しています。
真庭市は、森林資源が豊富で製材・加工に携わるCLT生産者が多く、伐採から製品加工まで地域で一気通貫で取り組める環境が整っており、国内最大級のCLT生産工場を所有しています。
市内有数の観光地である蒜山高原に、生産時の端材や解体したCLT材を転用した組積造のホテルを建設することで、地域の人・モノ・経済の循環を高めていく提案です。
CLT部材の加工時において、10~20%の端材“みみ”が生じる。
それを構造壁や外装材に無駄なく活用することで、経済的かつ環境にも優れた建設を目指す。
規格材を想定し、そのサイズに最適な建物や家具の作り方を考案する。
これにより受注生産以外の生産にもつながり、地場の生産力のポテンシャルを最大限に生かすことができる。
大小様々なCLTを積み上げ、ボルト締めをする。
家具への利用も可能で増築や解体も容易で、この簡易な施工技術により、高速施工だけでなく、地域へのCLT建築の浸透を実現する。
このホテルでは「壁を造る・家具を組む・樹を植える・未来を考える・新たな出会い」といった五感を奮わせる体験が待っている。
木が香る凸凹の組積は、好奇心をくすぐり、差しこんだり、触れたりまるで秘密基地のような楽しさがここにはある。
<大成建設株式会社一級建築士事務所> 石川真吾、梅森浩、押川快、木村吉邦、小刀夏未、坂口裕美、鈴木智紘、関山泰忠、相馬智明、高橋秀秋、田中良、出口亮、松尾浩樹、山﨑信宏
「2024年度日本建築学会技術部門設計競技」で、当社社員有志グループ案「かさね木の都市(まち)-火をしなやかに受け流す、新たな高密木造都市の提案-」が佳作を受賞しました。
当設計競技では、個々の建築物の防耐火設計に配慮した木造化技術の推進にとどまらず、都市(まち)としても安全かつ魅力的な、革新的な火災安全技術を含む建築や都市のコンセプトを募集するものです。
当案は、火災から木造部分を守る方法として、木造部分を細分化し熱を受け流すことにより火災の拡大を抑制し円滑な避難と消防活動経路を確保する新たな木造防耐火建築物の提案です。
また、床を木質化することにより、重なり合う木の床が「かさねの色木」として日本らしい新たな都市の風景を創出します。
木がありのままの姿で現れて自然な魅力を保ち、重なり合いながら空に向かって広がっていく。
日本の伝統美にある「かさねの色目」を「かさねの色木」として外観デザインに表現し、日本らしい新たな木質都市の風景を創出する。
また厚い床の木質化により、効果的に都市へ炭素を固定・貯蔵する。
都市部においては、火災安全性を確保するために高い防耐火性能が求められる。
耐火建築物は、木造部分を耐火被覆で覆って部材の燃焼を止める処置を施すことになっている。
また、近年の法改正による高性能の準耐火建築物においても外壁や防火区画によって全体を覆う必要があり、いずれも木が現しにならず、木造本来が持つ魅力が損なわれている。
そこで、火災から木造部分を守る新たな方法として、従来の方法である「覆う・止める」ではなく「分ける・受け流す」ことで火災の拡大を抑制し、円滑な避難と消防のための経路を確保する。
火災時に建物内に発生する熱だけでなく、避難と消防活動の時間を最小化できる、新たな木造防耐火建築物を提案する。
<大成建設株式会社一級建築士事務所>
関山泰忠、梅森浩、小澤重治、田中良、山﨑信宏、木村吉邦、濱上結樹、馬場重彰、田中俊成、清野晶、相馬智明、羽田優太、シャオタイユィン、柿田哲志
「2024年度日本建築学会技術部門設計競技」で、当社社員有志グループ案「PRE-COOLED WOOD 水が循環するまちの防災センター」が佳作を受賞しました。
当設計競技では、個々の建築物の防耐火設計に配慮した木造化技術の推進にとどまらず、都市(まち)としても安全かつ魅力的な、革新的な火災安全技術を含む建築や都市のコンセプトを募集するものです。
当案は、木構造体の中に水を循環させることで建物を事前に冷却する技術により単一の建物の火災安全性を確保するとともに、循環水を都市における初期消火に活用する新たな消火システムを構築し、住民の安心安全に寄与する防災拠点となるレジリエントな建築を提案します。
木構造体の中に水を循環させることで建物を事前に冷却する技術により単一の建物の火災安全性を確保するとともに、循環水を都市における初期消火に活用する新たな消火システムを構築し、都市全体での火災安全性を向上させることで、人々の意識に根付いた木造火災への不安を払拭する新たな技術提案を目指す。
本提案の木構造体を循環する水は建物本体を守る耐火安全技術であると同時に、都市で発生する火災の初期消火に利用することが可能な計画となっている。
構造体に循環している水を積んだドローンが初期消火を行うことで、スプリンクラー等の消火設備が整っていない傾向にある木密地域が大規模火災に発展するリスクを防ぐ。本建築を中心とした新たな都市の消火システムを提案する。
このシステムにより、断水や地割れ等によって初期消火が遅れるリスクを低減し、住民の安心安全に繋がる地域の防災拠点を目指す。
また、地震が発生した際は構造体内を循環する水を備蓄水として一時利用することで、防災井戸の様に災害時の拠点となる建物の在り方を提案する。
木を予め冷却することで火災に強い木構造体とする新たな技術として「プレクールド・ウッド」を提案する。
木構造体内の冷水による木材の冷却効果により、耐火建築物として火災時に建物が倒壊せず安全に避難可能な、新たな耐火安全技術を目指す。
木構造体内に通る冷水は地下水を水源とし、空調の冷媒としても利用可能な7℃まで冷却し建物を循環させることで、平常時から木構造体の冷却を行う。
さらに火災時は、木材がスプリンクラーの作動温度でもある約70℃に達した際に、配管の形状記憶弁が熱により開放され、冷水が木構造体を覆うことで木材の発火を遅らせる計画とした。
建物に循環している水をプレクール技術を有する建物(プレクールド・ビルディング)の耐火安全技術として提案すると同時に、都市で発生する火災の消火水として活用する初期消火システムを提案する。
地震等による災害の際はインフラの途絶によって生活に多大な影響が出ると予想される為、建物内に循環している水を一部地域に備蓄水として提供することで都市の防災拠点となるレジリエントな建築を目指す。
<大成建設株式会社一級建築士事務所>
水田航平、河部純大、佐藤雅之、田中幹大