- 用途
- 鉄骨加工工場
- 所在地
- 福井県坂井市
- 延床面積
- 14,242.97m2
- 階数
- 地上2階
建築設計コンセプト
ファブリケーターと作る鉄骨架構を魅せる工場
木下工業株式会社の創業75周年を記念し、老朽化する鉄骨加工工場の移転計画です。新工場では、製造動線を整理した上ワンウェイ化し、事務機能においては別棟とし、執務環境の向上を図りました。事務所棟および工場棟の構造は、鉄骨FAB自社製造の鉄骨を使用し架構を魅せる計画としました。いわば職場が自社のショールーム機能を果たしています。来場した人たちに驚きを与え、働く者に誇りと愛着を与える工場ができないかと考えました。
工場棟は、鉄骨のダイナミックな架構に加え、卓越風などの地域の気候を分析し、効率よく溶接ヒュームを排出する形状を採用しました。事務所棟は、工場から切り離し別棟として計画しました。オフィス機能をすべて2階に集約し、福井を代表する白山を望みながらひとつ屋根の下従業員全員が働く環境を実現しています。
構造設計コンセプト
組立て柱形式で合理的な構造架構を実現
本建物は、建物の用途と動線計画から階高が平均12m、建物短手方向スパンが約17~23mと大きく、また積雪荷重が175cmと非常に厳しい条件となっています。ラーメン構造では建物短手方向の剛性が小さくなり、柱断面が過大になることから、建物短手方向のフレームには組立柱形式による剛性の大きな柱を設けることで変形を抑え、合理的な構造架構としました。
組立て柱・V字柱で実現するダイナミックな架構計画
組立柱で剛性を確保したことで、細柱とV字柱を実現することができました。鉄骨量の低減と、杭本数の削減に寄与しており、空間的な圧迫感を緩和したダイナミックで美しい鉄骨架構となりました。鉄骨部材は施主自らが製作し、鉄骨ファブとしてのアイデンティティを体現しています。
雪国独特の雁木空間を思わせる組立て柱下部はノーヘルメット通路とし、従業員の日々のリズムを作り出しています。
鉄骨ファブとしての愛着をもてる耐震棚
耐震棚は事務棟の短辺方向の地震力を負担する耐震要素として設えています。棚板は鉄板の交点に必ず交わるようにコンピューテーショナルに最適化することで、鉄板の座屈補剛材として機能しています。鉄板の製作は施主が、棚板は地場産材で作ることで、愛着の持てる耐震棚として、事務エリアと食堂を立体的に繋いでいます。
設備設計コンセプト
旧工場においてヒュームが排気されないという問題を解決すべく、新たな工場棟は、気流シミュレーションを活用して換気システムの提案を行い、意匠性も確保したいという要望を両立させるような納まり提案を行いました。北からの強い卓越風を受け流し、かつ雪庇を防ぐ屋根形状とし、北側軒下の吸気ファンから外気を取り入れ、搬送ファンで外気を中継しつつ、中央のハイサイド窓から排気することで、有害な溶接フュームの効率的な除去を実現しています。
事務所棟は、開口率を抑えつつ眺望は確保する最適化制御を用いて、断熱性と開放感を両立し、高効率な設備機器を主体とした汎用技術を駆使してZEB Readyの認証を取得しました。
担当
担当 | |
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設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 古市理、石川真吾、井坂匠吾 |
構造設計 | 有山伸之、御所園武、片岡卓也 |
設備設計 | 鈴木真吾、瀧澤幸大 |
電気設計 | 鈴木真吾、家坂昂希 |
社外受賞
2024年 | 第58回 日本サインデザイン賞 銅賞 |
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2024年 | 第58回 日本サインデザイン賞 中部地区デザイン賞 |
2024年 | グッドデザイン賞 |
2024年 | 日本空間デザイン賞 Shortlist |
2024年 | 第58回 日本サインデザイン賞 銅賞・中部地区デザイン賞 |