WORKS 2023

E-Isolation

E-Isolation

  • 西側外観:掘削残土の再利用で丘を形成し、自然豊かな周辺環境と馴染むランドスケープを創出する外観

  • オープンスペース外観(夜景):丘の上に突き出したオープンスペースは、ガラス張りで来訪者を迎え入れる開けた空間としている。夜景では柔らかい光が来訪者を迎え入れる

  • 実験室内観:オープンスペースを実験室に斜めに貫入させることで、両者がダイナミックにつながる空間構成を実現

  • 2階オープンスペース内観:兵庫県産木材による明るく柔らかい空間。
    天井には県産スギ材で鉄を座屈補剛したハイブリット水平ブレースを採用し、地震動を連想させるギザギザ配置はオープンスペースのデザインコードとなっている

  • 2階オープンスペース内観:金属折版の外皮を斜めにすることで生まれる、木質化した内皮との隙間空間を活用し、収納や設備スペースとした

  • 2階オープンスペース内観:可動パネルは自由に動かし、ホワイトボードとしたり、ブラインドとしたり、折りたたんでプライベートな囲われた空間をつくることも可能

  • 実験室内観:木質化したオープンスペースとは対照的に緊張感のある実験室

  • 階段:通常は見せることのない鉄筋棒を使い手摺支柱をデザイン。細い鉄筋棒D16を1本ずつ職人の手作業で溶接。支柱デザインは、地震の波をモチーフとしており、手が触れる丹波材の木手摺と対比されて緊張感を生み出す

  • 1階エントランスホール内観:カーボンリサイクルコンクリート(T-eConcrete)平板と普通PC平板を用い、三連動地震の加速度時刻歴からランダムに変換し地震波を表現

  • サイン:本施設が建つ、「金物のまち」三木市の鉋職人、常三郎の魚住氏が鍛造する明治期製船舶錬鉄を使ったサインには特有の波模様が表れ、豊かな表情をかもしている

用途
実験施設
所在地
兵庫県三木市志染町
延床面積
1,657.69m2
階数
地上2階

建築設計コンセプト

次世代をリードする開かれた実大免震試験施設

本事業は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラムにおける国家レジリエンス(防災、減災)の強化の分野において、高精度荷重計測機構を有する実大免震装置の動的試験機を実装することにあります。免震・制振部材に強い負荷をかけ実大動的試験ができる装置は日本が長年求めていたものであり、研究者、発注者、ゼネコン、メーカー、国内外問わずすべてに寄与するものです。
したがって、本試験を行う空間は、次世代をリードする未来に開かれた明るく光る場所にしたいと考えました。 オープンスペースのボリュームを周辺環境に合わせて斜めに貫入させることで、実験、研究、学びがダイナミックにつながる空間構成とし、 実験室を臨むオープンスペースは、試験機を設置するための掘削土でつくった丘の上に据えることで、自然豊かな周囲と馴染むランドスケープを創出しています。 オープンスペースの内部は、徹底して県産木材を用い、試験施設従来の無機質でハードイメージを変え、温かみのある空間とし、リラックスしながらも緊張感を保つよう配慮しています。
未来の構造エンジニアがこれからも新しい挑戦をしたくなるような仕掛けとして、免震支承の積層感を丹波材を用いて表現した壁面、端材による木ルーバー、むき出しの鉄筋による手摺や環境配慮コンクリートなど素材へも徹底してこだわりました。特に明治時代の錬鉄を地元の鍛冶職人が叩いて製作したサインは初めての試みであり、他の材料ではできない豊かな表情が生まれています。
従来の無機質な実験施設のイメージとは異なる研究者の想像力を刺激する遊び心をデザインしています。

構造設計コンセプト

国内初の実大免震試験施設の構造デザイン

本建物は、免震部材・制振部材の実大動的試験を行う国内初の実大免震試験機(E-Isolation)のための2階建て鉄骨造です。建設時に大量発生する掘削土を再利用するため、外構に盛り土を行っています。その盛り土上部を2階事務エリアの片持ち架構で覆う形状としています。
また、事務所エリアに表れる水平ブレースは、木と鋼材を組み合わせたハイブリッド水平ブレースとし、木材を多く利用した事務エリアの雰囲気に適した構造部材としています。
その他にも、階段手摺支柱に鉄筋を利用し、床仕上げにも環境配慮コンクリートを採用した建物としています。

設備設計コンセプト

温かみのある空間を支える設備計画

本建物の特徴の一つであるオープンスペースの天井レスの空間構成を生かすため、換気はノズル吹出しとするとともに、排気空気は吹抜けから1階トイレなどへの給気としてカスケード利用する計画とし、デザイン性と省エネルギー性に配慮しています。また、空調には壁埋込型のハウジングエアコンを採用し、造作棚上部にエアコン設置スペースを設けることで意匠性に配慮しながらも、利用状態・エリアに応じた個別発停制御が可能な計画としています。
照明は、執務室として機能的な照度を確保するとともに、研究者が愛着を持てるように暖かく迎え入れるデザインとしています。
また、試験装置の安定稼働及び取得データの正確性を確保するため、ユーティリティ制御および電源計画にも配慮しています。

担当

担当
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
工事監理 株式会社構造計画研究所
大成建設担当者
建築設計 曽根奨、上田恭平、佐保田幸美
構造設計 中島崇裕、髙澤昌義
設備設計 奥津健治、三村渉
電気設計 奥津健治、遠藤晃

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