- 用途
- 実験施設
- 所在地
- 兵庫県三木市志染町
- 延床面積
- 1,657.69m2
- 階数
- 地上2階
建築設計コンセプト
次世代をリードする開かれた実大免震試験施設
本事業は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラムにおける国家レジリエンス(防災、減災)の強化の分野において、高精度荷重計測機構を有する実大免震装置の動的試験機を実装することにあります。免震・制振部材に強い負荷をかけ実大動的試験ができる装置は日本が長年求めていたものであり、研究者、発注者、ゼネコン、メーカー、国内外問わずすべてに寄与するものです。
したがって、本試験を行う空間は、次世代をリードする未来に開かれた明るく光る場所にしたいと考えました。 オープンスペースのボリュームを周辺環境に合わせて斜めに貫入させることで、実験、研究、学びがダイナミックにつながる空間構成とし、 実験室を臨むオープンスペースは、試験機を設置するための掘削土でつくった丘の上に据えることで、自然豊かな周囲と馴染むランドスケープを創出しています。 オープンスペースの内部は、徹底して県産木材を用い、試験施設従来の無機質でハードイメージを変え、温かみのある空間とし、リラックスしながらも緊張感を保つよう配慮しています。
未来の構造エンジニアがこれからも新しい挑戦をしたくなるような仕掛けとして、免震支承の積層感を丹波材を用いて表現した壁面、端材による木ルーバー、むき出しの鉄筋による手摺や環境配慮コンクリートなど素材へも徹底してこだわりました。特に明治時代の錬鉄を地元の鍛冶職人が叩いて製作したサインは初めての試みであり、他の材料ではできない豊かな表情が生まれています。
従来の無機質な実験施設のイメージとは異なる研究者の想像力を刺激する遊び心をデザインしています。
構造設計コンセプト
国内初の実大免震試験施設の構造デザイン
本建物は、免震部材・制振部材の実大動的試験を行う国内初の実大免震試験機(E-Isolation)のための2階建て鉄骨造です。建設時に大量発生する掘削土を再利用するため、外構に盛り土を行っています。その盛り土上部を2階事務エリアの片持ち架構で覆う形状としています。
また、事務所エリアに表れる水平ブレースは、木と鋼材を組み合わせたハイブリッド水平ブレースとし、木材を多く利用した事務エリアの雰囲気に適した構造部材としています。
その他にも、階段手摺支柱に鉄筋を利用し、床仕上げにも環境配慮コンクリートを採用した建物としています。
設備設計コンセプト
温かみのある空間を支える設備計画
本建物の特徴の一つであるオープンスペースの天井レスの空間構成を生かすため、換気はノズル吹出しとするとともに、排気空気は吹抜けから1階トイレなどへの給気としてカスケード利用する計画とし、デザイン性と省エネルギー性に配慮しています。また、空調には壁埋込型のハウジングエアコンを採用し、造作棚上部にエアコン設置スペースを設けることで意匠性に配慮しながらも、利用状態・エリアに応じた個別発停制御が可能な計画としています。
照明は、執務室として機能的な照度を確保するとともに、研究者が愛着を持てるように暖かく迎え入れるデザインとしています。
また、試験装置の安定稼働及び取得データの正確性を確保するため、ユーティリティ制御および電源計画にも配慮しています。
担当
担当 | |
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設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
工事監理 | 株式会社構造計画研究所 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 曽根奨、上田恭平、佐保田幸美 |
構造設計 | 中島崇裕、髙澤昌義 |
設備設計 | 奥津健治、三村渉 |
電気設計 | 奥津健治、遠藤晃 |